今回のテーマ分散型IDの文字を、スマホから多くの人やサービスとにつながるイメージ写真の上に掲載

トレンド講座/デジタル社会で“信頼”を構築する「分散型ID」とは?

世の中で話題のキーワードをDNPのプロフェッショナルが解説する「トレンド講座」。今(jin)回のテーマは「分散型ID」です。アプリやインターネットを介して、見(jian)知らぬ第三者とつながることが多い現(xian)在。個(ge)人の“信頼”を証明する仕組みとして注目される「分散型ID」の現(xian)在地(di)と展(zhan)望について、新(xin)規事業の創出(chu)に取(qu)り組むABセンターの岡本凜太(tai)郎が解説します。

目次

正面を向いたDNP・岡本のプロフィール画像

大日本印刷株式会社 ABセンター
岡本凜太郎

金融機関担当の営業として、金融庁との実証実験などを通じて認証に関する知見を広げた後、デジタルマーケティングや企業のDX化支援に従事。その過程で「分散型ID」の社会的価値や市場価値に注目し、国内外のステークホルダーをつなぐ活発な活動を展開している。

コミュニケーションの広がりで芽生えた「不安」とは?

私(si)たちは現在(zai)、インターネットを介(jie)して個人(ren)(ren)間の売買や代行サービス、マッチングサービスなどを利用して、日常的(de)に見知らぬ人(ren)(ren)とコミュニケーションをとり、金銭のやり取りをしています。また、オンラインで接触のあった人(ren)(ren)と、実際に会ったり、自分の生活圏に招き入れたりするなど、リアルに関わるケースも増(zeng)えています。

スマートフォンでインターネットを介して個人間の売買を行うイメージ

こうしたサービスは、暮らしを便利で快適にしてくれる一方、利用する私たち自身が何かしらの不安を抱えていることも否めません。「果たして相手は信頼できる人なのか?」「AIによる悪意あるフェイクではないか?」といったユーザーの不信感は、サービスを提供する側の企業から見ても問題です。特に、生成AI関連のリスクは、近年の政府発表や民間のセミナーでもしばしば取り上げられているテーマです。

不安を解(jie)消するためには、信(xin)(xin)頼に値する証拠が必要です。相手(shou)が公開しているプロフィールは正しいのか、逆(ni)の視点に立(li)てば、自分(fen)自身(shen)が信(xin)(xin)頼に足る人物であると証明(ming)できるのか。これらが確認できなければ、安心してサービスを利用することはできません。オンラインの人間関係が拡大したことで、信(xin)(xin)頼にほころびが生(sheng)まれ始めているのです。

“信頼”を担保する分散型IDの仕組み

話をするDNPの岡本凜太郎

一方、信頼の根拠となるプロフィール情報などの管理が、サービス提供企業に依存している点にリスクを感じている人も少なくないと思います。例えば、ウェブ検索やSNSをはじめとしたさまざまな機能を提供する巨大プラットフォーマーは、メールアドレスやアカウント名、パスワードを登録したユーザーにIDを発行しています。このユーザーIDの管理権限は、ユーザーではなくIDの発行者側にあります。

また、ユーザーIDの管理を通じて、インターネット上の行動だけでなく、リアルな居場所や行動履歴、購買履歴なども記録している場合があります。このように、私たちの個人情報や生活データが特定の企業に集中管理されている状況を心地よく思っていない人もいるでしょう。

こうしたなか、注目されているのが「分散型ID」です。世界中のコンピューター、サーバーにデータを分散させて管理するブロックチェーンなどの技術を使って、個人が自分のIDを管理・所有できる「非集中型の個人ID」です。考え方としては昔から議論されてきたものですが、近年のブロックチェーン技術の進展等により、具体化に向けた研究や実験が世界各地で加速しています。

具体的には、ブロックチェーンなどの共通基盤で発行されたDID(分散型識別子)をユーザー(生活者)が管理し、DIDに個々のサービス提供企業や学校、政府機関などが保有している本人を確認できる属性データを紐づけます。利用する際は、ユーザー自身が属性データを提供する対象や範囲を決定することができます。属性データを提供される側も、共通基盤に保管されている公開鍵と照合することで、データの正しさを検証可能です。

DNPにおいても、独(du)自(zi)(zi)の認証・セキュリティ関(guan)連等の技術を活(huo)用(yong)し、属(shu)性データを生活(huo)者が自(zi)(zi)ら管理することで、プライバシーを保護しながらデータを流通させる仕組(zu)みを構想しています。

DNPが考える分散型IDの活用イメージ

DID(分散型識別子)に企業や学校、政府機関などが保有している本人を確認できる属性データを紐づけ、ユーザー自身が属性データを提供する対象や範囲を決定するイメージ

とは言え、分散型(xing)IDを実現(xian)する具体的な仕組み(共通基盤)の構(gou)築(zhu)はまだ研(yan)究過程にあり、データの真正性を担保する公開鍵をブロックチェーンに任せていいのかなど、クリアすべき課(ke)題が残っています。現(xian)時点では、個別のサービスや特定のエリアごとに実証実験(yan)を行い、ユースケース(活用(yong)事例等)を蓄(xu)積している段階(jie)です。

動き始めた分散型ID実現への取り組み

世界の動(dong)きを見(jian)ると、2022年3月にW3C(※1)が、検証(zheng)可能な属性データのデータモデル「VC(Verifiable Credentials)Data Model v1.1」を発表したほか、2023年8月からEU加盟国で、行政サービス・企業・教育機(ji)関・オンライン取引・電子署名・電子処方箋等のデジタルIDサービスと相(xiang)互連携する「EUデジタルアイデンティティウォレット」の実証(zheng)実験が始まりました(※2)。特に後者は、社会実装(zhuang)に向けた第(di)一歩として注目を集(ji)めています。

日(ri)本(ben)政府もこうした動きに呼応(ying)し、内(nei)閣官房のデジタル市場競(jing)争(zheng)本(ben)部が「Trusted Web推(tui)進(jin)協議会(hui)」(※3)を設(she)立しています。特(te)定のサービスに過(guo)度に依存せずに、データ自体(ti)とそのやり取りを検証できる領(ling)域を拡大して信頼(lai)性を向上させるフレームワーク「Trusted Web」の国内(nei)における推(tui)進(jin)母体(ti)として、2030年(nian)頃の実現をめざし、さまざまな情報(bao)発信を行っています。

  • 1 W3C(World Wide Web Consortium):インターネット上で利用される技術の標準化を推進する国際的な非営利団体
  • 2 デジタル庁「日本におけるデジタル資産・分散台帳技術の活用、 事業環境整備に係る調査研究」より
  • 3 Trusted Web推進協議会

DNPが考える「分散型ID」プラットフォームの価値とは?

DNPは、安全・安心なコミュニケーションの実現に向けて、さまざまな課題を解決する重要な技術の一つとして分散型IDを捉えています。 特にここ数年、国内外の有識者と活発に意見交換するほか、DNP独自の強みを活かした取り組みを強化しています。

私たちは、ICカード関連で国(guo)内トップシェアを獲得しており、認証(zheng)・セキュリティに関する高度なノウハウや技(ji)術を持っています。これまで国(guo)際的な標準(zhun)規格に準(zhun)拠したICカードの社(she)会実装に大きな役割を果たしてきました。現在のデジタル社(she)会において情報インフラを構築する必(bi)要があり、分散型IDが注目されるなか、認証(zheng)・セキュリティに関する技(ji)術を有するDNPがその実現に取(qu)り組(zu)むことは必(bi)然とも言うべき流れでした。

話をするDNPの岡本凜太郎

分散型IDにおける、データフォーマットの標準仕様は、すでにW3Cが定めた「VC Data Model v1.1」はあるものの、更新に向けて仕様変更の可能性があり、さまざまな議論がある状況です。そのため、最新情報のフォローアップが欠かせません。

そこでDNPは、欧州最大(da)規(gui)模のアイデンティティ分(fen)野のカンファレンス「European Identity and Cloud Conference(EIC)」やG7サミットの「G7群馬高崎(qi)デジタル・技術大(da)臣会合(※4)」の関連イベントに参(can)加(jia)するなど、国内外(wai)のステークホルダーと情報交換・相(xiang)互(hu)理解を図っています。また、政府(fu)主(zhu)催のTrusted Web推進協議(yi)会とも密に連絡を取(qu)り、産(chan)官学を連携したネットワークを築いています。

  • 4 詳細は、デジタル庁の2023年3月31日のニュースリリースをご覧ください。

「日々の行動」や「実績」の情報が、個人の信用を後押しする社会に

DNPは自らも、分散型(xing)IDの社(she)会実(shi)装(zhuang)に向けた取り組みに参画する一員として、事業性を実(shi)証(zheng)する複数のプロジェクトを進(jin)めています。そのひとつが、Trusted Web推進(jin)協議会のユースケース実(shi)証(zheng)事業(2022年度・2023年度)にも選定(ding)された「共助(※5)アプリにおけるプラットフォームを超えたユーザートラストの共有」です。

  • 5 共助:自助と公助では賄いきれない範囲を担う考え方。助け合い。

「たすけあいアプリMay ii(メイアイ)」の活(huo)用イメージ。

このプロジェクトは、DNPが提供する、移動に困って手助けを求める人と手助けしたい人をマッチングする「たすけあいアプリMay ii(メイアイ)」を起点としています。同じような「共助」の視点を持つ複数の事業者のアプリを連動させて、ユーザーの実績を共有します。そして、そうした「共助」の実績が、「この人は信頼できる」という評価につながるか、「信用されるデータ」として社会に役立つかという検証を行う実証実験です。「共助」の視点は、個人の助け合いを後押しするだけでなく、学校での評価や就職活動の際の活動証明などにも活かせる大きな可能性を秘めていると考えています。

2023年9月には、三(san)菱UFJ銀行とパートナーシップを組み、分(fen)散型IDに関する技術と事業化の検証(zheng)を開始(shi)しています。これは、個(ge)人の属性・学歴・資格・職歴・スキルなどをデジタル証(zheng)明書として発行・検証(zheng)できるネットワークを構築し、就職や転職の場面(mian)での活用を実現するものです。これまではキャリアごとに分(fen)断されていた個(ge)人のアイデンティティを統(tong)合し、自律的なキャリアの形成(cheng)と自己証(zheng)明ができる社(she)会をめざしています(※6)。

DNPと三菱UFJ銀行が取り組む分散型IDに関する技術および事業化検証のイメージ

DNPと三菱UFJ銀行が行う、個人の属性・学歴・資格・職歴などのアイデンティティを自ら管理し証明できるネットワーク社会のイメージ図

現在、分散型IDを活用する取り組みは世界各国で進められており、こうした事例の積み重ねの先にゴールが見えてくるはずです。そこで求められる企業の枠を越えた相互連携や国際間の協調において、DNPはこれまで蓄積してきた知見を大きな強みとして発揮していきたいと考えています。

分散型IDと各種情報を連動させることで信頼を高めることと、個人を証明するデータとして、分散型IDを本人の意思に基づいて活用できる社会を実現することは、机上の空論ではありません。近い将来、生活者の快適で豊かな生活を支える「あたりまえ」になると信じています。
そして、DNPの認証・セキュリティ関連の技術やサービスを活かして、社会の基(ji)盤となるプラットフォームを構築するなど、社会実装に向けて取り組んでいきます。

分散型IDなど、DNPのデジタルアイデンティティ事業についてコンセプトサイトを用意しています。
こちらもご覧ください。

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